聖霊の宴

オーディンは顔をしわくちゃにして笑った。

『ふははは。実に、実に気分が良い』

オーディンのその表情にシルクとワイズは呆気にとられている。

そんなことは気にも止めずにオーディンは続ける。

『これほどまで愉快な余興は神界におってもそうそう目にできるものではない。実に愉快だ』

オーディンは二人を見下ろす。

『何故、その様な面をしておる。

言葉にせねば実感できぬとでも言うか?

ならば云うてやろう。此度の闘い貴様らの勝利だ』

シルクは地に伏せるサスケと、ボロボロになった自分とワイズとを見た。

『納得できぬ。と言った顔じゃな。

戦とは最後まで立っていたものだけが勝者。強き者が勝つのではない、勝った物が強いのだ』

シルクはその言葉を聞いてようやく辺りを見回すことができた。

弾け飛んだ畳の残骸。

削り取られた剥き出しの床は黒く焦げている。

埃は微かに舞っていて、流血した血の匂いが不快に鼻をついていた。

「一つ聞きたい」

ワイズの声。

『何じゃ?』

「なぜグングニールに貫かれて僕は生きている?」

必中必殺の槍に貫かれたワイズ。

多量の出血はしていたが確かにその生命を繋ぎとめていた。

『儂の愛槍グングニールは確かに必ず標的を居抜き必ずその生命を奪う最強の矛であった。
しかし使い手が違えばその威力は異なり、魔祓いの光で、翡翠の風で魔力を削ぎ取られその分貴様の心臓から僅かに軌道がズレた。

その微々たるズレは貴様を生かし、そしてサスケの意識を逸らすものとなった』

オーディンは目を瞑りひと呼吸ついた。

『だが、まぁ・・・過程等どうでも良いではないか?

貴様らはサスケに劣りながら力を合わせることでサスケを追い詰めた。
そして今まで拒んでいた儂の力を使うことで生じた隙は敗北を呼んだ。

結果として貴様らは生き、勝者として儂と言葉を交わしている。この事実すら幻とでも宣い儂を愚弄するか?人間』

ワイズは笑った。

「いいや。あなたに優ったことを本当に誇りに思うよ」







< 307 / 406 >

この作品をシェア

pagetop