聖霊の宴
フレアは力ずくで身体を起こす。
そして、拳を握りこむなり
「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉおっ!」
出血する腹部と背面とを拳で打つ。
「ぜぇ、ぜぇぜぇ、はぁ」
『面白い。
血が止められないのなら外に流れ出る血管自体を圧迫して塞いだというのですね。
ですがまぁ、そんなのはただの時間稼ぎにしかなりませんがね』
フレアは立ち上がる。
すると視界がゆらゆらと揺れた。
その姿を見てメゼシエルは愉快そうに笑う。
『通達しましょう。あなたはこのまま何がなくとも17分後に出血性ショックにより死亡。
もしこれから私と刃を交えるなら、血流は更に促進され8分、私の鎌により傷を受ける度に更に三倍の速度であなたは死に至る。
さぁ、楽しい最期を迎えましょう』
にたりと粘りある笑顔をしたメゼシエルのそれは天使とはかけ離れていた。
堕天使としても異質。
その姿は死神のそれと似ていた。
「ごたごたとうるせぇよ!
その前に貴様を倒すことだけが俺様がサモン様にできる唯一の恩返し。貴様に邪魔はさせぬ!!
イフリート!!!!」
フレアの全魔力が一点に集中していく。
肉体は命の限界を知り、今までに抑制していた全てのフィルターを排除。
通常ならば肉体が崩れるために不可能な魔力を絞り出す。
その力たるや普段のフレアの四倍とも五倍とも、さもすればそれ以上のものとなっていた。
「これから俺様はただの殺戮人形と化す。やつを滅した暁には貴様の炎で以て俺様を灰とせよ。
オーパーツ『灼熱闘気』!!!」
フレアの命のリミット。
メゼシエルの告げたものはあくまでも普段のフレアの魔力ならではであった。
オーパーツを使用し、更に普段ではあり得ないほどの魔力の量。
残酷にも、自ずとリミットは早くなっていく。
『ふふふ、我が主の栄光の為あなたには確実に消えてもらいます』