聖霊の宴
『ぬっ、がぁっ!!』
メゼシエルは顔を歪めてのたうちまわる。
フレアは間髪いれずにメゼシエルに近づくと、不可視の炎を纏った拳を打ち付けるのだった。
「終われ、世界を乱す不届きものよ」
『人間風情がこの崇高なる神の使いを不届き者呼ばわりするとは・・・』
フレアの拳がメゼシエルの顔面の4分の3を打ち抜き消失させた。
メゼシエルはその場に力なく倒れた。
「はぁはぁ・・・やりましたよサモン様」
踵を返したフレア、イフリートのオーパーツを解除しようとしたその時だった。
『ツウタツ・・・コレヨリ3フン後ニ・・・死亡』
「なに・・・!?」
顔面の4分の3を失ってなおメゼシエルは立ち上がり、フレアの背中を切り裂いた。
フレアは反射的に鏡火を放ちメゼシエルの残る四半分の頭部を消し去る。
「終わった」そうフレアは零し、それとほぼ同時に不気味な殺気を感じとった。
頭部を失ったメゼシエルはそれでもなお、操り人形のようにぐにゃぐにゃと不気味な動きをしながらフレアを抹殺するべく漆黒の鎌を振り続ける。
「くそっ、いったい何なんだよ。頭を失っても動き続けるなんて」
『フハハハハ・・・貴様ニハ分カルマイ、我ガ本体ハ其処ニ在ラ・・・』
どこからか閃光が駆け抜けたかと思うと、それは漆黒の鎌の中心部を射抜いた。
「貴様の本体はそのデスサイズに組み込まれた真紅の宝石・・・だろ?」
『馬鹿ナ・・・私ガ、人間風情ニ負ケルトハ・・・』
暗闇から出てきた人物にフレアは安堵の表情を見せた。
「サモン様・・・」
しかしそれとは反してメゼシエルは不快そうな口調となる。
『確カニ私ハ敗北スル・・・ダガ貴様ハ判断ヲ誤ッタノダ』
「なんだと・・・
まさか!!」
サモンはフレアの身を案じこの場に駆けつけてしまった自らの行動の軽薄さに気付いた。
『ポリネア族ノ末裔デアル貴様を相手ニ私一人ガ来るなど有リ得ナイダロウ。
ソフィア族ノ娘ハ頂イタ、直ニ我ガ主ガ世界終焉ノ狼煙をアゲルダロウ。
フハハハハ・・・ハハハハハハハハハ』
「貴様等・・・」
フレアですら恐怖を感じるほどの怒りに満ちたサモンの表情。
サモンは先程の閃光でメゼシエルを消し去った。
サモンは直様フレアに駆け寄り簡単な治癒を施す。
「サモン様・・・俺のことはいいからあの娘を。
でなければ最悪のシナリオが現実になってしまう」
フレアは力ない声であったが力強い瞳でサモンを見つめていた。
サモンは握りこぶしを握った。
「ああ、分かった、すまないフレア。今はこの簡単な延命措置でどうにか生きてくれ。
私は行くよ」
サモンを見送り、フレアは力なく笑い、そしてゆっくりと眠りに落ちていった。