聖霊の宴
闇の侵攻
闇が蠢く。
光の一筋すらも遮断された洞穴の中でリコは鎖で磔にされている。
狂気は辺りに漏れ、弱い動植物は狂気に当てられ狂い死んだ。
「……この娘が器として機能するまでにどのくらい掛かるんだ?」
ソフィアは煙草に火を点ける、
わずかな灯りが回りの湿った岩肌を照らして消えた。
『本来ならば7日。
だがまぁ、この娘の狂気を以てすれば3日とかからないだろう』
ルシファーはリコを眺める。
一糸纏わぬ姿のリコの全身には血の刻印が刻まれていた。
刻印は溢れ出す狂気を血のように鎖を這って滴らせ、リコの足元で蠢いていた。
「なら、少なくとも3日は時間を稼がなきゃならないってわけか……面白い」
ソフィアはオーパーツであるグレイプニールを招来した。
「奴等の躾も済んだところだし、余興を楽しもうじゃないか」
グレイプニールが円を作りその中からヘドロの様に粘着しつな闇が溢れる。
それはボトボトと剥がれ落ち三人の人間を呼び出した。
「ああああああっ」
「ぬおおおおっ」
「…………………」
生気のない瞳。
身体は弛緩しているかのように力が入っていない。
しかし、だらしないほどに揺れるその姿からは想像もしないほどの魔力と狂気をそれぞれが放っている。
「さぁ"闇の軍勢"よ。
残る大陸王共を殲滅せよ」
「おおおおあっ」
グレイプニールの闇の中に消えていく三人。
『一応保険だ我々も行くぞ』
「ふーん。ルシファーにしちゃ慎重だね」
『まぁな……
そりゃあ慎重にもなるさ、天界転覆の大事なピースだからな』
「ん?何か言ったか?」
ルシファーの言葉をソフィアは聞いていなかった。
ルシファーはソフィアに見られないように残酷に笑う。
『いいや、何でもないさ』
そして二人は闇の中に消えていく。
ソフィアですら知り得ないルシファーの残酷なシナリオが歯止めの効かないままに加速していくのだった。