聖霊の宴
そして厳冬の城ではようやくサスケが正気を取り戻した。
サスケは辺りをキョロキョロと見渡し、様子を聴く。
「拙者は……負けたというのか?
勝利の槍は拙者を勝者には仕立てあげてはくれなかったのか」
サスケはすっかりと気迫がなくなっていた。
オーディンはただ黙している。
シルクの『呪浄』の力でどうにか一命をとりとめるに至ったワイズ。
「君は本当に強い男だったよサスケ。
おそらくは、いや。まず間違いなく僕にしろシルクにしろ一対一で君と対峙していたなら勝利はなかっただろう」
「早春の……」
ワイズはゆっくりとサスケに近づく。
そして手を差しのべた。
「けれど君は最後の最後で自分の力を信じてやることができなかった。
勝利の槍を手にした時から君の負けは確定していたのかもしれないね」
サスケはがっちりとワイズの手を握った。
ワイズは盲目のサスケにも分かるように差しのべた手に魔力を集めていた。
ワイズに引かれゆっくりと立ち上がるサスケ。
「立夏の……」
「はい」
シルクはサスケを見つめる。
「君の光はただの力ではない。そう感じた」
「……」
「拙者は拙者の力を誇示する為だけに統一王の座を求めた。
だが君の覚悟はそうではない。他を護る為の力が君の本質であろう。
だが君もまた忘れてはならない。我らの矮小な正義と言う心の中には必ず打ち消せぬ巨大な悪が根元にあるものだ」
サスケを圧倒したシルクの普段とは違った姿。
それが巨大な悪なのかは分からないが確かにその存在はシルクに恐怖を抱かせ。