聖霊の宴

そこにいたのは紛れもなくゲセニア・アルボルト本人であった。

宴の席で闇の絶対防御を駆使しシルクを苦しめた男。

シルクの目の前でソフィアのきょうじんに倒れ闇に飲み込まれたはずのゲセニアが、より強靭な闇を纏ってグレイシアとマリアの前に対峙しているのだった。

「知ってるのマリア?」

グレイシアの問いにマリアは答える。

そして口を開くとある結論に至るのだった。

「さっきの岩の攻撃も私は知っている。彼の最後は知らないけれど、もしも彼がソフィアの手によって闇に飲み込まれたのだとしたら……」

その答えをマリアは敢えて口にしなかった。

「ま、憶測で考えてても埒が明かないわ。

今は目先の敵をどうにかしないとね」

ゲセニアは闇を纏いながらゆっくりと前進してくる。

マリアはウンディーネの集束させた水を自らの回りを、まるで公転するかのように回している。

「マリア、あなたこいつのこと知ってるの?」

グレイシアの問いにマリアは頷く。

「立夏の大陸の宴の参加者です。

シルクに負けたはずですが、以前に見た時よりも遥かに魔力が増幅しています」

「とは言っても所詮は大陸王になれなかった。その程度の器ってことでしょ?

元大陸王の私が負ける道理が無いわ」

グレイシアが手を空で切るとゲセニアの足元から氷柱が生えた。

「『ヴァコース・テリトリー』!!」

蠢く闇がゲセニアを貫こうとする氷を食べ尽くす。

ゲセニアを覆っていた闇が左右に分かれるように晴れていく。

その眼前にグレイシアが迫っていた。

「『アイシクル・ウィップ』!この鞭に触れた凍傷じゃ済まないわよ」

氷の鞭が無防備なゲセニアを襲う。

すると先程の闇とは違う闇がゲセニアの眼前に急に現れた。

マリアだけがその異変を見逃さなかった。

マリアは直ぐ様水流弾を放つ。

間合いも長く、ゲセニアも反応していた。

蝿が群がりゲセニアを覆い尽くす。

「やはり、今のは別の」






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