聖霊の宴
全身を切られて膝が折れるシルク。
そんなシルクをクラフィティーは見下ろしていた。
「もはや抗う力もないか?」
それは最後の問かもしれない。
彼はこの闘いの中で何か目的があり、その為にシルクを試している様だった。
「答えよ」
霞の晴れた刃がシルクの喉元に突きつけられる。
シルクは目を伏せていた。
「返事がないなら是と受け取ろう。
残念だ。スカーレットの血をひくものよ!」
その時、大地が揺れ闇が世界を舐めた。
クラフィティーは全てを理解した。
「想定より大分早いが……ついにデモンズ・ゲートが開かれてしまったか。
仕方がない」
クラフィティーは全ての魔力を注ぎケットシーを具象する。
「大天使よ!やるべきことは分かっているな?デモンズ・ゲートが開かれた今、奴等に対抗しうるのは同じく扉を開けた者のみ!
世界を救えるのはーー」
クラフィティーのオーパーツ『ワンダー・ステッキ』の中でも最も強力な大幻術。
「誘えーー『永久回廊』!!」
ステッキから飛び出した異空間に飲み込まれたシルク。
そして、クラフィティーの後方で何かが大爆発を起こしたかと思うと、闇の中からソフィアが現れた。
「ほんとしぶといオッサンだねアンタ。
まさかグレイプニルの精神拷縛から逃れるなんて普通じゃないよ?」
ゆっくりと近づくソフィア。
クラフィティーは剣を構える。
「抗えるかな?扉を開いたこの俺様に」
「抗うことに可も不可もない。
私は君を足止めせねばならない、ただそれだけさ」
ざりっとクラフィティーは足を肩幅に開いた。
集中が研ぎ澄まされていく、
ソフィアは意地悪く笑う。
「そういやあ、今さっきアンタのオーパーツの魔力を感じた途端に、あのカスの魔力が完全に消えたね。
アンタさ……あのカスに何を期待しちゃってるのかな?」
クラフィティーはシルクを眼中にも留めないソフィアを見て確信を得た。
「君では彼には勝てない。
信念も何も持たぬ君に私は欠片ほども恐さを感じない」
「あ?」
クラフィティーの言葉にソフィアはキレる。
放たれる魔力はただそれだけで辺りの動植物を死滅させていくほどの障気をはらんでいた。