聖霊の宴
ソフィアが指をパチンと鳴らすと元の荒野に戻った。
クラフィティーは闇に磔にされ抗うことすら許されてはいなかった。
「あんたは俺様を幻術空間に閉じ込めることで、現実世界から隔離し、あのカスが扉を開けるための時間を作ろうとしたんだよな。
でも、あんたは逆に俺様の幻術空間に引き込まれてせっかく稼いだはずの何時間かは、現実世界ではたったの三秒にすぎませんでした。
くくくっ」
「・・・・」
クラフィティーは一言も発しない。
「あははははっ!
・・・・なぁ」
ソフィアは急に形相を変えてクラフィティーに近付いた。
クラフィティーの髪を乱暴につかみあげる。
「何か言えよこら!
ここは黙りきめこむとこじゃなくて、わずかな希望すらも打ち砕かれて青ざめながら後悔と絶望に浸るところだろうがよ!!」
罵声が響く。
クラフィティーはそれでも一言も発しない。
それどころかピクリと眉ひとつ動かさずに瞼を閉じていた。
それもそのはずである。
「……あ?」
すでにクラフィティーはこと切れていたのだから。
「なんでこのオッサン死んで……」
ソフィアが髪をつかんでいた手を離すとだらりと力なく首が重力で下に下がる。
闇が蠢き、あることを主に告げる。
「どういうことだよ?
オッサンの心臓が……無い?」