聖霊の宴

予期せぬ事態にわずかに動揺するソフィア。

しかしルシファーはクラフィティーの策略をほぼ全て理解しながら、ただ傍観していた。

ソフィアがクラフィティーの死を確認し、闇をほどこうとしたした瞬間。

クラフィティーの身体が温かく光りだした。

「なっ!」

その光はクラフィティーから消えてなくなっていたある一点へと収束していく。

温かな鼓動を打ちながらそれがまるで光のドームの様に地面に覆い被さる。

人一人が悠々と入れるほどの空間。

「なんだよこれ?

おい!ルシファー!!」

彼なら知っているはず。知っていたはず。

ソフィアは激昂をルシファーに向ける。

ルシファーは低い変わらぬ声で答えるのだった。

『貴様があやつを嘗めてかかっている内にあやつは2つの作業をこなしていた。

それは貴様を幻術空間に閉じ込めること、そして己が心臓を捧げ自らのもう1つの幻術を半永久的にかけること』

温かな光が似つかわしくない苦悶の表情のソフィアを照らす。

「だが、やつは実際には俺様の幻術空間に引き込まれ失敗した!だがこれはどういうことだ!!」

きっと睨み、ルシファーはソフィアを黙らせる。

そしてルシファーは人差し指・中指・薬指をゆっくりと立てた。

『三秒だ。

あやつが稼ぎたかった時間は、あやつが貴様から奪うことのできる最長の時間三秒だったのだ。

貴様にかけた幻術はその三秒を稼ぎ、自らの命を捧げ、あの光の小僧を永久的に幻術空間に幽閉することに成功した』

ソフィアは光のドームの温かな光に目をやる。

『貴様はまんまとあやつの策略にはめられたのだ』

「うぉぉぉぉぉぉおっ!!」

素手でドームを殴り付けるソフィア。

光は弾くでもなく温かく拳を包み込んだ。

「『黒撃』!!」

漆黒の闇を至近距離から放つが、それは光に吸い込まれた。

ソフィアは大地が震えるほどの魔力を込める。

「俺様を嘗めるな!!オーパーツ!!!『グレイプニール』」

ソフィア最強の力を以てしても光は干渉を許さなかった。

『全ての鍛練と時間と、苦悩と希望。

魔術や体術強化には一切目もくれず、その全てを幻術に捧げた。

その老兵が己が命すらをも捧げた大幻術……貴様ごときが打ち払えることなどできるはずもなかろう』


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