聖霊の宴
足音もない静寂の世界。
ミカエルはゆっくりと振り返る。
『…………ふっ。
最早私の用意していた問いかけなど無用の様ですね』
「ああ。始めてくれ」
シルクの頬には何か水滴が垂れた様な跡があった。
シルクはゆっくりとミカエルに近づいていく。
そして真っ直ぐに瞳を見つめる。
『これよりあなたにはこの世界に私を具象して頂きます』
「君をこの世界に?」
ミカエルは小さく頷いて言葉を続ける。
『これはオーパーツを招来するのにも必要な力であり、これから私があなたに渡す"鍵"を招来するためにも必要なことなのです』
「やり方は?」
迷いなど微塵もないことばにミカエルは笑う。
『あなたは最高の錬金術師の血を継いでいます。
具象の方法は至ってシンプルです。あなたの魔力を素材に私を作り出せばいい。
我々や魔界の住人の細胞は魔力によって形作られていますから、体組織となる構成物質を集める必要もありません』
「……わかった」
シルクはたぅた一言そう言うと瞳を閉じた。
魔力が滞りなく滑らかに身体の周りを巡っていく。
光輝く魔力の粒が人の形を作り出し、鮮明な画像を模写するかの様にゆっくりとゆっくりとディティールを仕上げていく。
「さぁ………」
髪が揺れる。
息遣いを感じる。
何よりも確かにその視線を感じる。
「おいで大天使『ミカエル』!」
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