聖霊の宴

シルクはゆっくりと瞼を開ける。

そして優しく微笑んだ。

「やぁ、ミカエル」

シルクは手を差し出した。

『強く……なりましたねシルク』

ミカエルはその手を優しく握り返した。

お互いの温かさが初めて伝わる。

ミカエルは悲しそうに視線を下に向けた。

『あなたとの逢瀬の喜びに浸りたいのもやまやまなのですが、事態は一刻を争います。

クラフィティーの覚悟を無駄にしないためにも次へ進みましょう』

「うん、分かってる」

ミカエルは自分の翼から一枚の純白の羽をむしりとった。

それを天にかざすように掲げる。

羽は強烈な光を放ち、直ぐ様真っ白な鍵に変形した。

『これは超越者達が天界へと招かれる時に通る門の鍵です。

そしてもう1つ』

ミカエルはもう片方の手に漆黒の鍵を持っていた。

それは見ただけで胸にもやがかかるような障気を放っていた。

『恐らくソフィアも開いたであろう魔界への門の鍵がこれです。

シルク、あなたにはこれより魔界の力と天界の力を獲得して頂きます。

まずはこの『デモンズ・ゲート=魔界の扉=』で七つの大罪と対面することになります』

ミカエルが漆黒の鍵を空中で回すと、純白の空間の気味が悪いほどに栄える漆黒の扉が現れた。

『大罪に心が喰われればあなたはもうあなたではなくなる。

最悪の場合には具象化された私の手であなたを消滅させます』

「頼もしいね、大天使に尻拭いまでしてもらえるなら不安はないよ」

扉が開く。

シルクは振り返らずにその扉へと足を入れた。









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