聖霊の宴

呪われた聖剣


「オオオオオ……『滅火業却』」

サタンが指をたてると、闇色の炎が灯る。

「待てよ……」

サタンはおぼろ気に遠くの街を見下ろしていた。

シルクは叫ぶ。

「やめろルシファー!!!」

サタンが指を軽く振ると緩やかな山なりを描きながら遥か遠くの山を越えてとある村に落下した。

直後。

「なにあれ?」

「そんな……」

雲をも突き破り蒸発させるほどの闇色の火柱が上がった。

遠目からでも分かるその破壊力。

もし村に直撃していたのなら村の全土など悠に消失させているのだろう。

サタンはまたも炎を産み出す。

「やめろよ。

お前はいったい何がしたいんだ!」

シルクは光を左手に集める。

「『聖撃』!!」

魔祓いの光がサタンの腕に直撃する。

しかしシルクの光はサタンの表皮に傷一つつけることもできずに消滅した。

サタンはまたも闇色の炎を放り投げる。

今度は山に落下したのが肉眼でも確認できた。

威力は更に増し、今度は直撃した山だけでなく、その山を含んだ山脈一体が一瞬にして吹き飛んだ。

闇色の火柱は消えることなく立ち上ぼり続けている。

サタンはまたも炎を産み出していた。

その間隔はどんどん短くなっている。

次々と地平線の近くに闇色の火柱が立ち上ぼっていく。

闇色の炎は光を発することはなく世界を闇色に染めていく。

「…………」

『シルク?』

悲しみ、怒り、尊厳、正義、勇気扉の中で支配したはずの感情が胸のうちで渦巻いていた。

「シルク」

その時、シルクの方を誰かが優しく叩いた。

シルクは振り返る。

「ワイズ、僕は……」

「分かっているさ」

ワイズの笑顔はシルクの不安を吹き飛ばす風だった。

「何だよ見ねぇ間に立夏の大陸王として立派になったじゃあねぇか」

フレアはシルクの胸にドンと拳を当てる。

力は入っていなかった。

それでも、強い瞳はシルクの勇気により一層の炎を灯す。

「シルクお願い」

「ちゃんとしなさいよ、シルク・スカーレット」

「あとは主に託そう立夏の」

仲間の声が力になる。

皆との未来を願う希望は道しるべとなり、シルクを導く。
< 379 / 406 >

この作品をシェア

pagetop