聖霊の宴
ーーーーそして八年後。
サマー・グラウンドは史上でも1、2を争う猛暑に見回れていた。
「うへぇー、暑いよぉ」
リンクは炎王の城の執務室でうだうだと文句を言いながら仕事をしている。
「しかし人使いが荒いよ!幾ら世界を救ったからって言ってもこの人使いの荒さは頂けないでしょ!
ね、そう思うだろ?」
リンクの仕事ぶりを横目に見ながら、窓際に立ち平和そうな街を眺める一人の男。
「ねぇ聞いてるの?
ーーフレア?」
それは全大陸王バーク・フレアであった。
その強い瞳と民を思う心は全く変わっていないどころか、年月を経て日に日に増しているようにも思える。
「なぁにアイツの人使いの荒さは今に始まったことじゃあない。
黄炎でも、自分はバカンスに出掛けたきり連絡の一つも寄越さずに部下は血を流して働いていた。なんて噂も幾度となく聞いているーー」
その時、フレアの目と鼻の先を高圧の水流弾が横切った。
水流弾が弾けた壁は爆弾でも炸裂したかのように広範囲に及んで消し飛んでいた。
「陰口とはいえ、この大陸王に向かって散々ねフレア?」
扉の先から入ってくる1つの影。
ブロンドの髪は肩ほどに短く切られ、雰囲気が違っていた。
「これはこれは、此度のバカンスは如何でしたかな?
立夏の大陸王……マリア様?」
フレアの皮肉にマリアは舌打ちをして消えていった。
フレアは「くかかっ」と笑ってまた窓の先を眺める。
晴天に1つの雲が浮かんでいる。
絹のように柔らかく滑らかなそれはフレアを上機嫌にさせた。
「今ごろアイツは何してんのかねぇ?」
その言葉にリンクも手を止めて窓から外を眺めた。
「あぁアイツね……
何してんのか分かんないけど、自由にやってんのは確かなんだろうね」
そう言って笑って、リンクは再び山積みになった仕事に取りかかる。
部屋にはリンクの筆がはしる音だけが響いていた。
そしてその頃、灰炎のサモンを訪ねる者がいた。