聖霊の宴

灰炎の中心にあるサモンの家。

ノックの後に青年が1人入ってくる。

その青年を見たサモンが嬉しそうに笑って出迎えた。

「これはこれは久方ぶりだね、ワイズ王。よく来たね、まぁ座って」

そう椅子を引いたサモンであったが、ワイズは軽く微笑み首を横にふる。

「今日は例の件で伺っただけですので。定期的な監視は我々四王の務めの一つですので」

「ああ、そうだったね……」

サモンは床に目をやるようにして笑った。

ワイズはお辞儀をするとその部屋を目指す。

一番奥の部屋でワイズを待っていたのはリコだった。

ワイズが部屋に入るとリコは嬉しそうに笑った。

「今日はワイズが遊びに来てくれたのね。ねぇ、聞いて!

フレアったらひどいのよ?毎日でも遊びに来てやらぁなんて言っておいて前回来たのはいつだと思う?」

ワイズは壁に柔らかくもたれてリコの話に耳を傾けていた。

「んー、ちょっと分からないなぁ。いつなんだい?」

「三ヶ月前よ!三ヶ月前。信じられないでしょ!?」

ルシフェルの闇に堕ちたリコであったが、皮肉にもルシフェルの強靭な魔力と一体化していたが為にその命をとりとめていた。

ルシフェルが消滅すると光は止み、汚れを払われたリコだけがその跡に居た。

「おっとすまないリコ。

今日はまだ仕事が残っていてね、もうそろそろおいとまするよ」

「あら、そうなの?残念ね。

久々の話し相手だったのに……目が見えないのは退屈だわ」

あの時からリコは両目の光を失った。

明るいのか暗いのかさえもリコの視角は教えてはくれない。

闇に飲まれた者への罰だとしたら、それはあまりにも理不尽でワイズは悲しそうに笑った。




居間に戻るとサモンが待っていた。

「これから晩秋の大陸へ行くのだろう?」

サモンの真っ直ぐな瞳にワイズは困った様に眉間にしわをよせながら目を細める。

「あなたには隠し事がかないませんね。

あちらも定期的な監視が必要ですからね。シルフィード」

ワイズが魔力を込めるとシルフィードが柔らかな光と共に表れた。

「彼の元まで宜しく頼むよ」

『お任せあれワイズ』

翡翠の様な輝きを放つ翼がワイズの背に生え、飛び立つ。

一度翼を振るうと目にも止まらぬ速さでワイズが空の彼方へ消えていった。




< 385 / 406 >

この作品をシェア

pagetop