聖霊の宴
村の裏手の山の中、秘密基地と子供たちに呼ばれる場所で今日も集まる子供達。
「今日は我らが秘密基地より南東の散策に出掛けようと思う。
意義のあるものはいるか?」
木の枝と藁を編んだ紐でできた簡易的なテントの様な形状をした秘密基地。
子ども五人が入ったらぎゅうぎゅうになってしまいそうなほど狭いその場所で、頭を擦り合わせる様に小さな会合が開かれている。
リーダーなのか仕切り役になっている大柄の短髪な少年・ゴルド。
ゴルドは村長の息子でわんぱくな子どもの大将といった性格である。
髪が長く目がほとんど隠れてしまいそうな細身の少年・ニックは皆から博士と呼ばれている。
「意義なし。
これで博士の秘密の地図が大分拡がるね!」
八重歯が特徴の、いつでもにこにこしている少年・ライノスはお調子者だが意外と頭が切れる。
「よし満場一致だ!
行くぞ博士!ラック!」
「いえっさー!」
「いえっさ……」
博士は基地の奥の宝物箱の中から手書きの秘密の地図を取り出した。
ラックは荷物係なのかおやつと水の入ったリュックを背負う。
ゴルドは恐らく隊長の証とでもしているのであろう薄汚れた絹を首に巻き付けてから左腕に結びつける。
「いつみてもゴルドのその姿はシルク・スカーレットみたいだね!」
「がっはっは、おいおいラックそんなにおだてたって何もでてきやしないぞ!」
「おだててなんかないよ、本当のことさ!!」
「そうか、がっはっは!!」
そんな恒例の会話を後ろから黙って見る博士。
ゴルドは基地の扉を開けると咳払いをひとつして高らかに言う。
「さぁ出発だ!!我らが目指すのは……」
「英雄シルクの残した聖剣の祠!!」
ゴルドの言葉にラックが続き、拳を突き上げると博士と二人がそれに続いて拳を空に向けてあげる。
「我らは勇敢なる聖霊の使者なり!」
「聖霊の使者なり!!」
ゴルドは鼓舞の余韻に浸っているのか少し間を置いてから手を下ろした。
「よし、ゆくぞ!」
「「おおーーーっ!!」」
そして三人は南東目指して秘密基地を拠点に散策に出掛けていった。