聖霊の宴
「ぎょええええええええええっ!!」
「こ、こないでよゴルド!!」
「隊長と呼べ!隊長と・・・・
ってそれどころじゃないいいいいいいいっ・・・・」
ラックが不振な人物を見つけた頃。
ゴルドと博士は林の中を全力疾走していた。
それもこれも理由は未だにゴルドの背中にあった。
「博士頼む取ってくれ!!」
ゴルドの体が揺れるのに合わせて背中のソレもうにゅうにゅ揺れていた。
「無理!僕は虫は嫌いなんだよ!!」
「貴様それでも友達か!!
頼むから取ってくれ、でなけりゃ絶交だからな!!!!!」
「無理無理!そんなこと言うなら虫嫌いな僕に無理やり虫を押しつけようとするやつなんかとは絶交するからな!!」
ぎゃーぎゃー言いながら二人はアニスの越えられなかった池を悠々と越えて村の入り口まで走っていた。
今の会話と二人の言動を鑑みるに、どうやらこの二人の絶交は自力では免れようもないのだが、少し先の話をすると二人は腐れ縁として10年後も変わらずつるんでいる。
そんな二人の絆を守るのは予想だにしていなかった人物であった。
「む、あれは?」
先にその存在に気がついたのはゴルドであった。
「アニス?」
そして続いて博士も、通りの真ん中で何か紙を持ちながら立っているアニスの姿を見つけた。
二人が駆け寄るとアニスは生気の感じられない瞳で二人を見た。
「おい、どうしたんだよ?」
アニスはゴルドを見つめながら目を開いたまま大粒の涙をあふれさせる。
急なことに後ずさりしたゴルドではあったが、友達(アニスには面と向かって言ったことはないが)の様子に真剣な表情で問う。
「どうしたんだ?言ってみろ」
博士も心配そうに見つめている。
アニスはゆっくりと言葉を振り絞る。
「メリルが・・・」
えづいてしまって言葉が出ない。
「メリル・メリルがどうした!?」
力強いゴルドの言葉にアニスは答える。
「メリルがさらわれた・・・」
「おい、何言って・・・?」
アニスは博士に握りしめてくしゃくしゃになった紙を渡す。
それを読んだ博士の顔がすぐに険しくなった。
「ここに書かれてる男・・・
もしも偽物が名前を語っているだけじゃなかったら本当にまずいよ」
「おい俺のも見せろ」
ゴルドが博士の手から紙を奪い取る。
『人質を返して欲しくば村にあるありったけの財宝を持って、、村はずれのほら穴に持ってこい。ただし持ってくるのは村の子どもに任せ、大人が近くにいるのが分かったら人質の命はなくなる。
ウルガー・サイロフォン』
さすがのゴルドも表情が変わる。
眉間には皺がより、目は一点を見つめている。
首は横に傾げられ、その頭上には大きなクエスチョンマークが踊る。
「ウルガーなんちゃらって誰?」