聖霊の宴
ふわり虹色の球体が少年の視界を無数に横切った。
あまりにも幻想的な空間に、響き渡るのはストロング・バイトの悲痛な咆哮。
我に返った少年が目にしたのは、胴を真っ二つに切り裂かれその命を閉ざされたストロング・バイトの姿だった。
「……えっ、何が起こったんだ?」
辺りに漂う死臭。真っ赤に染め上げられた地面の真ん中にその人はいた。
「……『オータム・ランド=晩秋の大陸=』王。オルター・クラフィティ……血塗れ伯爵。」
高貴なスーツにシルクハット、細くも丈夫な木制の杖。
白髪の奥から覗く瞳は青色。
紳士的な佇まいに似合わない鋭く射ぬくような眼光。そしてストロング・バイトの血で全身が赤い血で染められている。
「く、クラフィティ伯爵。この命助けて頂きありがとうございました。」
少年はその場で、額が地面に擦れるほどに深い土下座をして頭を下げた。
「……直『聖霊の宴』が始まる。覚悟しておくことだ、スカーレットの血を引く者よ。」
「…………!?」
クラフィティは何かを呟き踵を返した。
数歩ゆっくり歩きだすとまた虹色の球体が少年の視界を埋め尽くす。
それがシャボン玉であると気付いた瞬間、クラフィティの右肩にキセルからシャボン玉を吹き出す猫の姿を少年は見たのだった。
視界を埋め尽くしていたシャボン玉はしばらくすると、一斉に弾け飛び。
散乱していたはずのストロング・バイトの屍と共にクラフィティの姿は無くなっていたのだった。