聖霊の宴
「なになに今の悲鳴!?」
「今のってまさかラックの声じゃ・・・」
一足遅れて洞窟に入ったアニスと博士にもラックの悲鳴が届いていた。
二人にも緊張がはしる。
「やっぱり本物がいるんだ・・・」
博士の不安そうな声。
「ならこの先にメリルもいるってことだろ!」
普段のアニスからは想像もできない勇ましい声に博士は驚いていた。
二人は合図もなく一斉に走り出していた。
すぐに二人は分かれ道へと差しかかる。
その時、前方から突進してきた何かとアニスは衝突して弾き飛ばされた。
「いたたたたっ」
「うおおおおおっ、なんだなんだ!!?」
暗闇でほとんど見えてはいないが博士はその声に気がつく。
「その声、もしかしてゴルド・・・?」
「その声は博士か」
「いたたた、僕もいるぞ」
「アニス・・・そうか」
ゴルドの声は優しかった。
「それよりも今の声ってラックじゃなかった?一緒に入ったんだろう」
アニスの言葉にゴルドは小さくこたえる。
「ここが分かれ道になっていたから二手に分かれて捜索していた。そしたら右の道の先には大量の金貨が隠されていた。そして左の道の先へ行ったラックが悲鳴をあげた」
三人は理解した。
今からはいつもの探索ごっことは訳が違うということ。
本来ならば今からでも村に戻って大人の助けを求めるべきなのであろう。
しかしその選択肢は誰にもなかった。
「助けに行くなら早くしないとメリルはともかくラックが危ない」
「人質のメリルは生かされるけど、侵入者のラックは排除されるか・・・」
「でも相手は凶悪な犯罪者だ・・・どうする参謀」
博士はここにくるまでにいろいろなパターンをシュミレーション済みであった。
その中から今の状況に一番近い作戦を選択して二人に耳打ちして告げた。
「・・・作戦は以上だよ。シンプルなだけにハマれば効果は大きいけどちょっとのミスでも命取りになる。できるかい?」
博士の作戦を聞いた二人は不安などなかった。
「できるかい?だと!?
聖霊の使者である俺様に出来ないことなどない!!」
ゴルドの力強い声。
「僕も今は力があふれている。僕たちならできるよ!やってやろう!!」
もはや弱虫アニスはどこにもいない。
「よしっ、じゃあ行こうか」
博士も立ちあがる。
そして三人は慎重に、だけれども力強く左側の道へと進んでいくのだった。
慎重に、出来る限り素早く移動していき。
三人は奥から明りが零れているのを見つけた。
いっそう息を潜めて近付いていく。
博士はゴルドにある物を手渡し、自分も何かを握りしめた。
アニスは気持ちを落ち着けるために胸に手を置いて深呼吸する。
明りがどんどん近付いてきて、三人は男の後ろ姿を視界にとらえた。