聖霊の宴
「……えっ?」
マリアの問いにシルクは気の抜けた答え。
マリアは声を荒げる。
「えっ?じゃないわよ。敵に情けをかけるつもり?」
大天使の羽衣から解き放たれたマリア。
「本当に甘い坊やね。敵をむざむざと解放するなんて、もう一度狙ってくださいと言っている様なものよ。」
そうは言いながらもウンディーネの力を出す気配はマリアにはない。
「だってマリアさんが好きにしろって言うから……」
「だから解放したって?」
「はい。」
にこっ。と年相応の笑顔を見せたシルクに、僅かばかりの敵意すらマリアの中から消え失せた。
「はぁ。こんな子に負けるなんて……まぁスカーレット家の血筋じゃしょうがないのかしらね。」
そういってマリアが去っていこうとした時だった。
「マリアさん。」
シルクの声に足を止めて振り返る。
「一緒に行きませんか?」
握手をする為に伸ばされた手。
「……本当に変な子。」
マリアはゆっくりとその手を握った。
「宜しくシルク。」
「こちらこそマリアさん。」
そんな2人の様子を誰かが草影から見つめているのを2人はまだ気付いていなかった。