聖霊の宴
全ての邪念を取り払い、心を静かにした瞬間。
バリィィィィィイン。
シルクの居た教会が音を立てて崩れ落ちた。
「……初めまして。シム牧師。」
目の前に立っていたシムにそう言ったシルク。
「私の明鏡止水の幻術から抜け出すとは、予想以上だよシルク・スカーレット君。」
『……幻術?あれが?』
ミカエルですら驚いていた。
「明鏡止水とは邪念なく静寂な心の状態のこと。それを鏡による光の乱反射と、心理的な揺さぶりで阻害することで幻術に落としていたんだよ。」
シルクの完璧な分析にシムは拍手をした。
「ご名答。だが、少しだけ来るのが遅かったね。」
その時、シルクは気付いた。
シムに隠れて見えにくいが、前方で人が倒れていることに。
「マリアさん!!」
シルクが駆け寄る。
「……シルク?気を付けて、シムは強い……」
ガクッ。と力なく倒れるマリア。
シルクは大天使の羽衣でマリアの止血をして、振り返る。
「ノーム気を引き締めていくよ。『ギフト・鮮血の石』」
シムの指に煌めいた血の様に赤い石。
おぞましいほどの魔力がそれからあふれ出ていた。
「これがノームの真のギフトだ。」