聖霊の宴
「はぁはぁはぁ。くそ、餓鬼どもめ。」
シムは息を切らしながら森の中を駆け抜けていた。
地図は懐に持ったまま何の確認もせずに。
「次に会ったらただでは済まさんぞ。はぁはぁ。」
ある大きな木を通り抜けた時だった。
「いやぁ、じい様はしつこいねぇ。」
「――なっ、誰だ!?」
忽然と背後に現れた男。
男はタバコをぷかぷかと吸っている。
「諦めない強い意志、嫌いじゃないが、なんだかアンタは美しくないな。」
「ふん、また餓鬼が何をぬかすか。ノーム『明鏡止水』!!」
光り輝く剣が男を幻へと誘う。
が、しかし――
パリィィィン。と一瞬にして砕け散った明鏡止水。
シムの顔がひきつる。
「無理だよ、アンタ程度の力じゃオレを幻術にはかけれない。ルシフェル、本当の幻術ってやつを教えてやってよ。『冥獄』」
タバコの黒い煙がシムにまとわりつくと、深い闇の中へと引きずり込む。
「何なんだ、何なんだ貴様はぁ!?」
地中に埋もれる様に、深い闇の中へと引きずり込まれるシム。
手を出しもがくが、男の言葉を聞くこともなく、何処かへと消えてしまった。
「オレは"波乱を呼ぶ者"、ソフィア族の唯一の生き残りさ。名前は無いからソフィアとでも呼んでくれ。」