聖霊の宴

少年は赤い風船を受け取り、溢れんばかりの笑顔を返す。

「お兄ちゃんありがとう。」
青年は頷いて優しく微笑む。

そんな青年に駆け寄り母親が急に土下座をするものだから少年はびっくりしてしまうのだった。

「大陸王ワイズ様。ありがとうございます。」

母親は頭を地面に着けて、これでもかと言うほどに崇める。

ワイズは悲しそうに笑い、そっと母親に手を差し伸べた。

「顔をあげてください。王とは民なくしてあり得ない。僕の尊敬する師からの教えです。」

母親はビクビクと震えながら自分から立ち上がり、深々と頭を下げると、そそくさと去って行った。

「ふぅ、難しいものだね王とは。そう思うだろシルフィード?」

ポォッ。と暖かな緑色の光を放ちシルフィードが姿を現す。

『ふふ。あなたが難しく考え過ぎなのではないですか?ワイズ。』

「そうか……そうなのかな。」

ワイズはまた歩きだす。

行く宛てもなく風の様に。



< 95 / 406 >

この作品をシェア

pagetop