金持ち家族の執事様は貧乏女子!
そう。
それが昨日のこと。
マンションから出た。
荷物も大体捨てて。
必要なものだけをつめたバッグをもって。
黒くて長い髪も結んで帽子をかぶって隠した。
大家さんがいたからこそ髪を伸ばせたんだから。
そんな大切なものを隠したかった
誰にも見せたくなくて。
仕事も捨ててマンションを出たんだ。
そう、そして今近くの公園にある自動販売機の横に座り込んでいる。
青くて新しい立派な物に見えた。
傍(はた)からみれば家出少女だろう。
だが、わたしはそんな軽い状況ではないのだ。
家出だったらどんなに幸せか。
親がいたら、家族がいたら、また帰れる暖かい家があったらどんなに幸せか。