アイ ニード ユー
「おい」


ナンパ男の言っている事が理解出来ずに益々嫌な顔をしている女と、自分に近付いている俺を見て今にも逃げ出しそうなナンパ男に向かって俺は声を掛けた。




正確に言えば、その時には既にナンパ男は逃げ出していた。




「…何なのよ、ったく」

走って逃げていくナンパ男の後ろ姿を見て、女は舌打ちをした。




「………おい」

俺はもう一度声を掛ける。
さっきよりもドスを効かせた低い声で。




「…え?」

その女は、サッと俺の方を向いた。



長い黒髪が綺麗な線を描いて揺れた。

同時に俺を見る黒い瞳。
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