小悪魔な年下くん!
「あ~ぁ…。逃げられちゃった~…」
春也は、そう言いながら残念そうに僕を見た。
…そんな事言われても。
僕だって、逃げるなんて予想外だし?
だいたい、僕らのことを小悪魔、なんて呼ぶ人初めてだもん。
だいたいの人は、僕らの名前を知っていて「季一くん」だの「春也くん」だのと、自分の興味が沸いている人の名前を最初に呼ぶ。
「まぁ、焦らないでよ。ほら、見てよ?」
僕は、そう言うと先輩の落して行った生徒手帳を見せた。
「どれどれ~…」と言って、僕が中身を見ようとしたとき…。
「あ~…っ」
背の高い翼に、生徒手帳は取られた。
そんな翼から取ろうと、一生懸命跳ぶ春也。
だけど、155㎝くらいの僕と春也が180㎝もある翼に敵うはずがない!
唯一敵うのは、香多。
だけど、香多はそんな事お構いなしで、屋上から空を見上げている。
「藤乃愛莉(ふじのあいり)高校二年生。8月9日生まれ」
「へぇ~。愛莉かぁ♪」
「よし、季一!!その愛莉とやらに、逢いに行こうぜ!!」
「ダメ。まだ、愛莉に逢うのは早いよ?」