【短編】クリス王子とセシル姫

マーカスへは馬車で向かう。
城の前庭に用意された立派な馬車に乗ってセシルを待つ。

やがて馬車の入り口が開けられ、クリスの胸がドクンと音を立てた。

騎士に手を添えられながらセシルが馬車に乗り込む。
今日の彼女は緋色のドレスに包まれ、髪を綺麗に結い上げられている。
その緑色の目がクリスを見つけて、またにっこり微笑んだ。

「お待たせ」

「、、、うん」

―――綺麗だな、、、。

クリスは隣に座った自分の妃に、いつものように目を奪われた。

いつもの軽装も彼女らしくて好きだけど、
こうやって着飾ることは滅多にないので、たまに見ると胸が高鳴る。

やがて馬車はゆっくりと動き出した。
体に振動が伝わってくる。

セシルは胸に手を当てると、ふぅっとため息をついた。

「緩くしてもらったけど、やっぱり苦しい、、、」

コルセットのことを言っているらしい。
普段身に着けないから、慣れないようだ。
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