【短編】クリス王子とセシル姫
つられて胸元を見たクリスの目に、彼女の豊かな胸の谷間が映る。

久しぶりに見た気がして、つい見入ってしまった。

セシルがクスッと笑った声で、クリスは我に返った。

「色っぽいでしょ?」

セシルの言葉に思わず赤くなる。

クリスは目を逸らすと、「胸、開きすぎだろっ」と文句を言った。

「私が用意したんじゃないもの、この服」

「取り替えさせればいいのに」

「別にいいわよ。
クリスが喜んでるし」

「―――喜んでないっ!」

むきになって返すと、セシルが楽しそうに笑う。

そんな笑顔に、力が抜ける。
代わりになんだか胸が熱くなった。

昔はクリスとの結婚を受け入れながらも、彼女がそんな風に笑ってくれることなんてなかった。

昔と今の違いを感じられるのは、やっぱり嬉しかった。

「、、、セシル」

囁きながら顔を寄せる。
クリスの意図を察して、セシルはそっと目を閉じた。

唇を重ねると、なんだか色々どうでもよくなってくる。
セシルの甘い唇を味わうのも久しぶりだった。
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