【短編】クリス王子とセシル姫
「あ、いいの」

セシルは酒を運ばせようとしたアーサーを制した。「ちょっと体調悪いから」

「そうですか」

それだけ食べてれば大丈夫だろうとクリスは内心思っていたが、口には出さなかった。

「堅苦しい敬語は無しでいいわよ。
クリスとはそんな仲じゃないんでしょ?」

セシルの言葉にアーサーはふっと微笑むと、「うん、まぁ」と早速口調を変えた。

「婚儀の時に、会っているのよね?」

「そうだよ」

急にくだけた調子で会話を始める2人に少し複雑な気持ちになりつつ、クリスは「従兄弟だから当たり前じゃん」と口を挟んだ。

「大勢来たもの。覚えてないわよ」

「無理もないよ」

アーサーはちょっと笑った。

「クリスは終始ぶすっとしてたしね。
セシル姫に俺のこと紹介もしてくれなかった」

「そうなのよねーっ」

セシルが当時を思い出したように声を上げる。
クリスは思わず顔をしかめた。

「グリンダム王国の王女だったんだよね」

「ええ」

「グリンダムのラルフ王は若いのに素晴らしい賢王だと評判だよ」

「あら、目的のために手段を選ばないって話は聞いた事ない?」

セシルの言葉にアーサーがまた笑う。
なにやら2人はどんどん盛り上がり始めた。
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