【短編】クリス王子とセシル姫
優しく囁くその声に、クリスは慌てて目を伏せた。

久し振りに、本気で涙が出そうだった。

「我慢、、、してたの?」

小さく問いかけた言葉に、セシルがクスッと笑ったのが分かった。

「、、、うん」

その応えに、クリスの中で抑えていたものが弾けた気がした。

クリスの片腕がセシルの肩を抱き寄せた。

堰を切ったように口付ける。

セシルの手がクリスの髪に触れる。
お互いに触れあいながら、ただ夢中で唇を求め合った。

やがて体を反転させるように、クリスはセシルを寝台に寝かせると、その上に覆いかぶさった。

お腹に体を乗せないよう気をつけながら、また口付ける。

セシルの腕もクリスを抱きしめてくれる。
その温もりに乾いていた心が、ゆっくり確実に潤っていくのを感じていた。

唇が離れると、頬に、耳に、キスを落す。
セシルが小さく吐息を漏らした。

クリスの唇がセシルの首筋を這う。
そして強く吸い上げた。

「クリス、、、」

「ん、、、?」

「そんな所に、痕付けちゃだめだからね、、、」

セシルの言葉にクリスは我に返って彼女の首筋を見る。
そこには既に赤い印が刻まれていた。

「あ、ごめん、、、」
< 33 / 42 >

この作品をシェア

pagetop