【短編】クリス王子とセシル姫
「遅かった?」

「うん、、、」

セシルが苦笑する。

「ま、いっか。
髪を下ろしておけば隠れるし」

クリスは穏やかに微笑んだ。

そしてふと思い立つと、乱れた夜着から覗く胸元に顔を埋めた。

「じゃぁ、ここにも、、、」

「えっ!」

セシルは抵抗するように体を起こしかけたが、その両肩を掴んで押し留める。

「ちょっとクリス、、、」

咎めるような声をあげた時にはすでに遅く、セシルの綺麗な胸元にも赤い痕が付けられた。

「、、、こらっ」

セシルが文句を言っているけど、気にしない。
これでもう胸の開いた服は着れない。

クリスは満足すると、その唇でセシルの肌を改めて味わった。
白くてキメの細かい肌は、触れるだけで心地いい。

そんな感触も久し振りだと思いながら、その唇を柔らかい胸の敏感な部分へ移動させた。

「あっ、、、」

優しく吸い上げると、セシルの体が反応する。
久し振りに聞いた甘い声に頭の奥が痺れるように熱くなった。
口に含み、夢中で愛撫した。

「あ、、、ん、、、」

舌を絡めるたび、セシルが感じてくれる。

愛撫を続けながらクリスの手はセシルの体を撫で降り、やがてお腹のあたりで止まった。

一瞬、我に返る。
ふと愛撫を止め、そのお腹に目を向けた。


ここに、新しい命が生きている。


自分と、セシルの子―――。


今更ながら、幸せな気持ちに包まれる。
動きを止めてぼんやり見つめるクリスに気付き、セシルがそっと目を開けた。

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