【短編】クリス王子とセシル姫

式典へ向かう馬車の中、隣のセシルはまた「気持ち悪い、、、」と呟いた。

心配そうに自分を見るクリスの視線に気付き、セシルはクスッと笑った。

「クリスの事が気持ち悪いわけじゃないわよ?」

クリスは思わず目を丸くした。

「思ってないよ!」

「あ、思ってないか」

セシルがそう言ってまた笑う。
クリスは苦笑すると、その目を彼女の胸元に向けた。

そこには確かに赤い痕が残ったままだった。

「、、、いいの?それ」

「え?」

「これ」

クリスがセシルの胸元を指差す。

セシルは呆れたように「自分でやっといて」と言った。

「そういう服しか持ってないの?」

「、、、そういうわけじゃないけど」

「だったら隠せばいいのに」

クリスは不満気に呟いた。

セシルはそんなクリスをしばらく見ていた。
何も言わず瞬きを繰り返す。

そしておもむろに口を開いた。


「もしかして、、、胸が開いてる服が嫌だったの?」



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