【短編】クリス王子とセシル姫
久し振りの遠出
朝食と着替えを済ませると、クリスの一日が始まる。

毎日の予定は色々だが、たいてい勉強、稽古、議会への参加で通常の一日は過ぎていく。
どれもこれもたいして楽しい予定ではない。

クリスは自室を出ると、騎士を伴い政治学の講義を受ける部屋へと向かった。

燭台や絵画が並ぶ廊下を淡々と歩く。
ふと前からやってくる人の姿に、クリスは思わず足を止めた。

結わずにおろしたままの綺麗なブラウンヘアを揺らしながら、
彼の妃、セシル姫が歩いてくる。

シャツとズボンとブーツといういつもの軽装で、その姿からはとても彼女が王族であるとは思えない。

セシルはクリスの姿を認めると、にっこり微笑んだ。

「おはよう」

明るく挨拶を投げかけられる。

クリスは複雑な気分で「おはよう、、、」と返した。

「これから講義?」

「、、、うん」

「頑張って!」

セシルはそう言うと、ひらひら手を振って横を通り過ぎていく。
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