理想のワタシ
私が座っている席の近くの自動ドアが開いた。
チラッと見る……

「……!!」

さっきの出来事がまたプレイバックし始めた。
そう、

昇太郎クン……

腕にガーゼ。
ほっぺに絆創膏。
和哉のとび蹴りで……?!

すぐに視線をそらし、バッグから黒縁メガネを取り出し、つける。
少しでもバレないように……
私は身を小さくしてガタガタ震えていた。
携帯を取り出し、メールを慣れた手つきで打つ。

“きをつけて しょうたろうくんがきたから!”

すぐに送信した。
携帯を握り締めた。

気づいて……

ついでに二つ縛りの髪の毛をほどく。
これで……!


「?!」


昇太郎クンが受付のほうへゆっくり歩いていく。
ヤバい!!
和哉ァ……

私の隣に誰かが座ってきた。
顔を上げると

「和哉ッ!逃げよう?!?怖いよ……」

「そうだな。逃げようか」

和也が何とかバレずに来てくれた。
そのとき

「……愛華チャンと何イチャついてんだよ」

バレた……昇太郎クンに。
和哉は舌打ちをする。

「愛華チャンは俺の女だ……」

私は震える。
和哉の腕にしがみついて。

「行くぞ、愛華」

「う……うん」

私と和哉は席を立ち、近くの自動ドアから外へ出た。

「おい!聞いてんのかコラ!!」

そんな事を許すはずもない昇太郎クンが追いかけてきた。

「いやぁぁ!!」

「走れ愛華!」

和哉の手をとり、無我夢中で走った。
怖いよ……和哉ァ……

私たちはすぐ近くの公園の茂みに隠れた。

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