ヒーローくん!
はわー…出ました、ミーハーシオ。
シオはイケメン大好きだもんねー。
「おばあちゃんがイケメンって言ってたのー?」
「っていうか、昨日帰ったらおばあちゃんとママがメロメロになってたのよ。」
そうだ、西田家の女性陣はみんなミーハーなんだった。
「おばあちゃん、車にぶつかりそうになったところを助けてもらって、家まで荷物運んでもらったんだって!!」
あたしももうちょっと早く帰ってれば…ってシオは悔しそうだ。
「イケメンヒーローかぁ…」
どんな感じなんだろう?て想像してみるけど、頭に浮かぶのは…
「シオ…あたしMr.イ●クレディブルはイケメンじゃないと思うよ…」
赤いタイツでムキムキ逆三角形のおじさんは、あたしは遠慮したいなぁ…
ガタガタガタンッ
突然、背後で大きな物音がした。
あたしとシオはびっくりして目を向けた。
すると、長くてボサボサの髪に瓶底眼鏡の男子が、片膝を抱えて痛そうにしていた。
どうやら机に膝をぶつけたらしい。
あたしたちの視線に気づいた彼は、慌てて立ち上がり、猫背を更に丸めてそそくさと教室を後にした。
「うーわ…、今の川瀬じゃん」
シオが心底嫌そうな顔をする。
「え、シオ知ってるの?」
「去年同じクラスだったのよね。しょっちゅう学校休んでたみたいだし、なんか謎だしあの見てくれだし…
だいたい今ドキあんな眼鏡なんてギャグとしか思えないんだけど」
ブツブツと文句を並べ立てるシオ。
「川瀬くんかぁ…。ものすごい視力悪いんだねー」
ポツリとあたしは言った。
シオが目を細め呆れたようにあたしを見据える。
「…ちょっと。あんたってどうしてソコなのよ?」
「へ?」
「へ?じゃないわよ!もっと他に言うことあるでしょ!『え~気持ち悪~い』とか『変な人~』とか!」
「えー」
「しかもさっきの何?ヒーロー=Mr.イ●クレディブルって頭の中どうなってるのよ?あんなおっさんイケメンじゃないわよ!!」
「あははは」
ダメだこりゃ、とシオは肩をすくめた。