ヒーローくん!

午前最後の授業の体育を終えて、あたしとシオは教室に戻ろうとしていた。

ふいにシオが首元に手をあてる。

「あ…!ゴメン、更衣室にネックレス忘れたから先に行ってて!」

「ありゃま、了解~」

更衣室へと走っていくシオの後ろ姿を見送る。

通りすがりの男子たちが、シオを振り返っていた。

シオってば罪なコねぇ~

くふふふとあたしは笑う。

そして先に教室へ戻っとこう、とクルリと前を向いたときだった。

「んぶっ!?」

突然方向転換したせいで、誰かに思いっきり正面衝突してしまった。

「ごめん、大丈夫?」

頭の上から凜とした声が降ってきた。

「いや…あたしこそ前見てな…」

ほあ…!?

言いながら見上げて、びっくりした。

あたしがぶつかってしまったのは、あの川瀬くんだった。

「…あ…の…中村…さん…?」

固まっているあたしに、モゴモゴと川瀬くんが声をかける。

って…あれ…??

「えっと…あ…ゴメン」

「いや…それじゃあ…僕は…」

「うん、ゴメンねー」

ボソボソと言って去っていく川瀬くん。

あたしも進行方向へ向いて、…

クルッと振り返った。


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