【ND第2回】雨
そして、背中を押してくれる。
「さぁ、行きなよ」
まだ間に合う、そう言う由貴。
不思議だね。
由貴がそう言うから大丈夫な気がしてきたよ…
「もしダメだったら、戻ってきて良いからさ」
冗談っぽく言った由貴は、どこか寂しそうだったけど
寂しいのは、由貴だけじゃないよ?
あたしは、確かに由貴に恋してた。
それが、ほんの一瞬だったとしても、由貴に恋してた。
ありがとう、由貴。
「ありがとう」
行ってきます。
優しい由貴の笑顔があたしを強くしてくれた。
ちゃんと、伝えてくるから。
…──────
「斗真…!」
何時間待ってくれていたんだろうか。
約束の時間なんて、とっくに過ぎているっていうのに。
ベンチにうずくまるあなたの姿。
雨が降っているっていうのに…傘も差さずに。
あたしは折り畳み傘を開く。
「…はい」
差し出すと、驚いたようにあたしを見上げる斗真。
「…バカじゃないの …なんでまだ待ってくれているの?」
泣きたいわけじゃないのに。
溢れ出てくる涙。
「…っ…なんで傘も差してないのよ…」
本当にバカだよ。
でも、斗真は笑うと
「もものことで頭いっぱいでなんも出来なかった」
ずるいよ。
ずるすぎるよ。
あたしは傘を投げ捨てると、冷たく濡れた斗真を力いっぱい抱き締めた。