【ND第2回】雨
バカだとわかっているが、止められないのは彼を“愛している”から。
ううん、そんな安っぽい言葉で片付けられないほど彼にはまっているのだ。
惚れた者の弱味ってやつか、なんて考えながら喫茶店へ入ろうとしたとき。
〜♪〜♪
ケータイの着信音が鳴った。
「…はい」
〈あ…!もも?〉
「ええ…どうかしたの?」
〈ごめん…会議が入ってしまって〉
申し訳なさそうに言う彼に、またかと思いながら頷いた。
「今、家出たばっかりだから、全然大丈夫…仕事頑張ってね」
嘘ばっかり並べて。
偽りの声でそう言った。
〈ごめんなぁ?あ…今日の夜なら大丈夫だからさ…家来ない?〉
突然の誘いにあたしは迷うことなく頷く。
「うん、じゃあまた連絡して」
〈おう、じゃあな〉
久々に高鳴る胸。
久々にゆっくりできるかも。
なんて期待するが、あたしは首を振って目を覚ます。
きっとまたドタキャンだ。
よくあることじゃない。
そう言ってしまえば、それだけのこと。
でも、そう簡単には心は理解出来なくて、それはあたしが子どもだからで。
だから、いつもドタキャンで…
だから、浮気されちゃって…
ううん、もしかしたらあたしが浮気相手なのかもしれないね。