【ND第2回】雨
そんなあたしには、似ても似つかない透き通るような綺麗な音。
すうっと耳に入ってきた。
その音に引き寄せられるように、自然と足は止まり見入っていた。
よくある、路上ライブ。
なのに、ギターを片手に歌を歌っている青年の周りには路上ライブとは思えないほどの人だかり。
ピアノが弾むような綺麗な声と優しいギターの音色が奏でる音楽は今まで聞いたことがないくらい心に響いた。
特に、音楽に詳しいというわけではない。
ただ、もっと聞きたい。
そう素直に思った。
でも、彼は雨男なのか。
はたまた、あたしが雨女なのか。
真っ青だった空は、いつの間にか分厚い雲で覆われていて、ポタリとあたしの頬に落ちてきた滴に雨だと気づく。
集まっていた人々は慌てたように去っていく。
あたしは持っていた折り畳み傘を広げると、雨がひどくならないうちに家に帰ろうとした。
でも、彼はギターを持ったまま残念そうに空を見上げていて、気づくとあたしは傘を差し出していたんだ。