【ND第2回】雨



不思議だ。


ほんの数時間前までは、彼氏のことでいっぱいだったのに。


「「あの」」


「あ、もも、先言って」


そう言われ、顔を少し俯かせながら


「また会えるかな?」


なんて聞いてしまった。

すると、由貴は驚きながら笑って


「俺も同じこと言おうとしてた」


って、それだけであたしは充分だった。


また、会えるって思えた。

なんの根拠も約束もないのにね。


「俺さ、いつもここでライブするから来てよ、絶対だよ?」


そういう彼に頷くと、お互い連絡先を交換するわけでもなく、さよならを言った。


最後に「またね」を付け足したけど


…──君には届いたかな?



その夜は斗真から連絡があったものの、いく気になれなくて初めて誘いを断った。



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