【ND第2回】雨



…───放課後。


「来てくれたんだ!」


気づいたら、足を運んでいた。


「うん」


頷くと、笑顔の由貴の隣に腰下ろす。


今日は、まだ見物客はいないみたいだ。


「あれ?今日もも清楚だね」


「いつも清楚ですけど」


チラっと見ながら言うと、由貴は、ははっと笑ってギターを手に取った。


そして、ウォーミングアップだとか言いながら、由貴が奏でる音楽にあたしは“安心”を感じた。


あたしのドロドロした心をキレイにしてくれるようで。


こんなあたしでも、受け止めてくれているようで。

いつの間にか溢れる涙。


そんなあたしに、由貴は歌い終わるとハンカチを差し出してきて


「ももは感情豊かだね」


すごくキレイな心を持っている、と言う。


でも、それは違うよ…由貴。


この涙はそんなにキレイなものなんかじゃないんだ。

由貴に見せられるようなものじゃないの。


「キレイな心の持ち主はちゃんと笑える人だよ」


気づくとあたしはそんなことを口走っていた。


「偽りの笑顔なんかじゃなくてね…心から笑う人のことを言うんだとあたしは思う」


あたしには出来ないこと。

いつもいつも、偽りの笑顔ばかり浮かべて本当に笑うことが出来なくなったんだ。


わからなくなったんだ。




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