わがままマイハニ―
「お嬢様…?」
これが何のサインだかは
3年も一緒にいた俺は
もうよく知っている
行かないでのサイン
「…行くの?」
まだ座ったままのお嬢様は
下から見上げて
上目遣いで話す
「…やだ
さっきの怖くて
1人でいるのやだ
お願い
行かないで」
「それでしたら
ドアの外にいますので
何かありましたら
お呼び下さい」
もう一度ふりかえって
部屋を出ようとすると
さっきより強くすそを握る
「…ね
お願い」
「…かしこまりました」
俺はそっとお嬢様の
隣に座る
「ん、
ありがと」
そう言って笑うと
ベッドに入って
静かに目を閉じる
「陵、手握っててもいい?」
もう一度目を開けて
お嬢様が言う
俺はそっと手を差し出す
俺の手を握ると
安心したように
眠りにつく
まるで小さな子供のように
俺の手を握ったまま