半熟cherry
『ちょっ、離してよ!!』
郁に手を引かれ、連れて来られたのは。
朝だというのに人通りの少ない。
駅の裏にある階段。
「…俺がいつ、好みじゃないって言った?」
郁が階段の手摺りに手をつく。
私は手摺りと郁に挟まれて。
身動きがとれなくなっていた。
「…俺がいつ、おかしいって言った…?」
郁はそう言いながら。
私の頬を指先で撫でた。
その指は。
頬から唇へと移動してくる。
「…あんまり可愛いコト言うと。
襲っちゃうよ?」
郁が目を細めて。
唇の右端を持ち上げた。
声のトーンに。
仕草に。
カラダが熱くなる。
…ドキドキしてくる。
どぉしよう!!
どぉしよう!!!
どぉしよう!!!!
『かッ、可愛いコトなんて言ってない!!』
郁に触れられたままの顔が熱い。