半熟cherry
乗り込んだ電車には。
そこそこ乗客がいて。
あいにく空いてる席はなかった。
「…こっち」
グイッ。
隣に並んでいた郁に腕を引っ張られると。
郁がいたドア側のスペースに押し込められる。
…私はドアと郁に挟まれる形になった。
ちょっと甘い。
でも爽やかな郁の香水の香りが鼻をくすぐる。
目の前には郁の黒いTシャツ。
気付かれないように見上げると。
郁は窓の外を見てた。
光に透けて髪が柔らかさを増しているように見える。
サラサラの前髪から覗く意志の強そうな瞳。
キュッと結ばれた唇は柔らかそうなピンク色。
手摺りを掴んでる手は指が長くって。
ちょっと骨っぽいケド、キレーな手。
……どうしよう。
ドキドキしてるんですケド……。