半熟cherry

「…次、降りるから」



郁が背中越しに言った。



…はぁ…やっと降りられるのか…。

でも降りるってコトは。

あの彼女らも降りてくるよね、たぶん。



それを証拠に。

郁の行動をチラチラ見てる。



……めんどくさい……。



電車が駅のホームに滑り込む。

周りの景色が遮断され。

無機質なコンクリートの壁が見える。



これから、どこに行くんだろ…。



「…今から5分間。
俺が何を言っても、何をしても黙ってな」



郁が耳元で囁いた。



『はい?』



5分間、黙ってろって…?

どぉゆう意味…。



「…降りるぞ」



囁かれた言葉の真意を確かめられないまま。

電車は止まり、出口が開いた。



私は。

郁の気配を背中に感じながら電車を降りた。



 

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