半熟cherry
郁は私の真後ろにいた。
隣に来るわけでもなく。
抜くこともなく。
歩幅を合わせて後ろを歩いていた。
……何を考えているんだろう……。
「あの〜…」
ホームから改札口へ向かう階段を上りきった辺りで。
声をかけられた。
と、同時に。
後ろにいた郁に腕を掴まれた。
『…い、郁ッ?!』
「黙ってろって」
郁は。
私を背中に隠すように振り返った。
「私たち今同じ電車に乗ってたんですけどぉ」
「めちゃカッコイイですねッ。
いくつなんですかぁ?」
…たぶんさっきの彼女らだ。
私は。
振り向かずに足だけ止まってる。
振り向いたところで郁が目の前にいるんだから見えないし。
背中は触れそうで触れない。
腕は掴まれたまま。
また、カラダが熱くなってくる…。