半熟cherry

遊園地なんてしばらく来てない。



…元カレと来て以来だわ…。



なんて。

思い出したくないコト思い出しちゃったよ…。



…フラれたんだよね。

就職やっと決まってこれで落ち着く…って思ってたら。

“好きな人ができた”ってさ。

……で、飲みに行って。

記憶なくして。



………郁と………。



チラッ。



隣を歩いている郁を見上げる。



見えない指で“スッ”と摘まれたような通った鼻。

それだけで意志を持っているような。

強さのある切れ長で二重の瞳。

ピンク色をした薄めの唇。



……フツーにカッコイイと思う。



見た目はね。

中身は人のコトからかって楽しんでる悪魔だけどさ。



だから、余計に思うんだ。



“あの日”がなければ。


郁とこんな風に話したりするコトなんてなくて。

ただの“教師と生徒”でしかなかったんだろうな。



 

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