半熟cherry
『そういえば、チケット代渡してないよね』
入り口で手、繋がれてたらすっかり頭から飛んじゃってた。
…郁、ゴメン…。
私はバッグから財布を出した。
「いいよ」
郁はそう言って私の手を止めた。
『よくないよ』
つきあってるワケでもない。
まして生徒に出させるなんて恥ずかしいし。
「…俺も男だし、カッコつけさせて」
そう言って郁は目を細めて微笑むと。
私の左手をキュッと握った。
私はその微笑んだ顔に。
心臓を掴まれたように苦しくなった。