半熟cherry
なんでよりによって“今”。
ココで、郁の名前が出ちゃったんだろ…。
小さくため息が漏れる。
そんなことは聞かなくてもわかってる。
それだけ頭の中が郁に侵されていたんだって。
まるで他人事のように気付かされた。
私だって子供じゃない。
この間からのモヤモヤした気持ちも。
心臓を掴まれたように痛かったのも。
触れられたトコロが熱くなったのも。
それがどんな気持ちなのかってことぐらい。
…わかってるよ…。
…でもさ。
なにもこんなトキに気付かなくてもいいじゃない?!
我ながらどうかしてると思うよ。
もう1つ、ため息を吐いたトキ。
涼真が温くなって水滴だらけになったビールの缶を手にして言った。
「茜は郁のことが好きなんだ?」