半熟cherry

その人は。

私の姿を確認するなり。



「好きだ!!」



そう叫んで抱きついてきた。



ワイシャツ越しに感じる体温。

“ハァハァ…”と荒い息遣い。



気付いたトキには…………。







「…浴衣、似合いますね」



ベンチに座わった私の隣に座る島崎先生。



……郁と同じセリフなのに。

島崎先生が言うと嫌悪感しか感じない。

さっきは、あんなにドキドキしたのに…。

…てか、なんでこんなに近くに座ってんのよ!!



4人掛けのベンチ。

私は端っこに座ってるんだけど。

膝が触れ合うくらいに近い。

…離れたくても、浴衣の端。

島崎先生が敷いて座っちゃってるし。

………サイテー……。



そんなことを思っていた私は。

島崎先生の怪しい微笑みには気付かずにいた。



「あの日のやり直し、しましょうか…」



 

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