半熟cherry
公園を出てからずっと黙ったままの郁。
……どこに行くつもりだろう……。
私の家は知らないはずだし。
……神社に戻るのかな……?
なんて。
“甘かった”と気付くのは。
時間にして5分後くらい……。
「…んのバカ!!」
郁の怒鳴り声が頭の上で響いた。
「俺が見つけなかったらどうなってたかわかってんのかッ!!」
『…だって殴ったから……』
「バカ!!相手は男だ!!
たまたまヒットしたんだろ?!」
郁は本気で怒ってる。
こんな顔、初めて見た…。
『…ゴメン…』
郁が私を追っ掛けてきてくれたのは。
紛れもない事実。
ホントに心配してくれてたんだ…。
「…何もなくて、よかった…」
俯いた私は。
郁に壊れ物を扱うかのように。
そっと抱き締められた。